原題:ALMOST HUMAN
製作国:アメリカ
製作年:2013年
深夜のドライブ中、謎の青い光を目撃したセスは友人マークの家へと逃げ込むが、セスの目の前でマークは青い光にのみ込まれ消えてしまう。2年後、突如として再び姿を現したマークだったが、彼はすでに人間ではない“何か”に変貌していた…。
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タイトルやパッケージデザインからして、ほんのり漂う80年代風?のちょっと古臭い感じがなかなかにそそる一本。内容にいたっては既視感満載で取り立てて目新しい点もなく、ありきたりなストーリーがありきたりに進んでありきたりに終わるといった感じでしたが、なんだろう、ちゃんと作ってるなぁという印象で、作り手の映画製作に対しての真摯な姿勢が見えてくるというか、ほんと“真っ当なB級ホラー映画”といえる出来なんじゃないでしょうか。なんというか安心して観ていられる感じが自分は好きでしたねぇ。
作品のあらすじを読んでいなくても、のっけからエイリアンに誘拐されてなんちゃらかんちゃらの話だってのは大体分かる展開ですね。
冒頭マークさんがアブダクションされちゃうエピソードにしても、大方のホラー映画のあっさり終わる冒頭シーンとは違って、明らかに尺を長めにとってしっかり見せようとしている感じがとってもいいです。
ただ、エイリアンに誘拐された人間が元の姿で戻ってくるストーリーというと、やっぱりあの往年の“見知った人間がいつの間にか別人にすり替わってゆく”という感じのじわじわ系を期待してしまうものですが、戻ってきたマークさんはというと、人間社会に溶け込もうという意識は全くないようで、いきなり大ハッスルのスラッシュ三昧。ああ、そっち系なのね…と。いや、いいんですけどね…。
ちなみにこのマーク役の俳優さん、とてもガタイがよくてクマさんみたいなナリなので、殺人鬼役も特に違和感なくハマってしまってて、そのあたりは作品的にどうなんでしょうかね。エイリアンによる乗っ取りなり替わりモノなんだったら、もっと虫も殺せなさそうな見た目の人の方がギャップがあっていいんじゃないのかなぁとか思ってしまいますが。まぁしょせん素人の戯言ですか。
あ、でもチェーンソーを持って奥さんを追いかけるシーンなんかはやっぱりマークさんみたいなガタイの野郎じゃないと様にならないから、やっぱりこれでいいのかな。奥さんが家の中へ逃げ込んで扉閉めた時点で、チェーンソーで扉ガガガーっとやってくれるかと期待しましたが、やってくれませんでしたね。足で蹴破るだけでした。
とまぁ、ここまで書いてきてちょっと気づいてしまいましたが、これ、エイリアンにさらわれて帰ってきたっていう設定あんまり必要ないような気がしますね。この話の筋であれば最初から何の関係もないただの人間型クリーチャーでも話通っちゃいますし。うーん、それは言わないお約束か。
マークさんの話ばっかりになってしまったので、主人公セスさんの話もしないといけませんね。
セスさんにいたっては、何とも状況に対する順応が早かったなぁと。まぁ事前に夢で色々予兆を見ているという設定だったこともありますし、心の準備もできていたんでしょうけど、ジェンを助けに飛び込んだ納屋で、いくらネバネバした裸の男がジェンの足を掴んでいたとはいえ、何の躊躇もなくいきなり腕の切断に思考が行くかなぁ。ラストのシーンでは命乞いするジェンに対してもほぼ躊躇なく石を振り下ろしてますし。
なんかこのあたりは昨今のゾンビ映画っぽいですよね。昔だったら、いくら襲われたとしても相手が人間の形をしている以上は躊躇を見せる描写があったように記憶していますが、昨今ではテンポアップのためか、身内であろうとゾンビ化したら躊躇なく頭打ち砕いたり撃ち抜いたりしますもんね。なんかこういう流れはコメディゾンビ映画くらいにしてほしいなぁと個人的には思います。
ちなみに、セスが繭からかえったおじさんの喉を糸鋸で掻っ切るシーンですが、あのビービービーっていう変なSEは何なんでしょうね。一瞬何の音かと思ってポカンとしちゃいました。
そうそう、そういえば、ちょっと映画の内容とは関係ない話になってしまいますが、この映画、「ムカデ人間」や「武器人間」と合わせて「人間シリーズ」として扱われているらしいですね。いやいや、なんというかこの関係ない映画に統一感のある邦題をつけて売り出す流れホントなんなんでしょうね。好きか嫌いかでいうと…、うんまぁ好きな方ではあるんですが。ただしょうもないなぁとも思います。
こういった流れって一体どのあたりからなんでしょうかね。明確にシリーズとして売り出されてはないけど、ちょうど同時期に公開された「ディセント」「ケイブ」「地獄の変異」あたりが洞窟三部作とかなんとか言われてたことがありましたが、あのあたりからでしょうか?もっと昔にもなんかあったのかな?一番記憶に残ってるのはやっぱり「変態シリーズ」ですが、他にもなんか色々出てましたよね。「小屋シリーズ」とか「山シリーズ」とか。ん?あれは違ったかな?
まぁ色々ツッコミどころはありましたが、もちろんそれらもB級ホラー映画の醍醐味なので、全部ひっくるめて充分楽しめた作品でした。日ごろひどいホラー映画ばかり観てて、最近当たりを引いてないなぁって方限定でお勧めさせていただきます。そうじゃない方は…。
「人間まがい」のスタッフ&キャスト
監督:ジョー・ベゴス
脚本:ジョー・ベゴス
出演:グラハム・スキッパー、ジョシュ・イーシア、バネッサ・リー