映画 | ブルー・リベンジ

原題:BLUE RUIN
製作国:アメリカ/フランス
製作年:2013年
ボロボロの青いセダンに住むホームレスのドワイトは、ある日、両親を殺した男が司法取引により釈放されたことを知らされる。たぎる復讐心を静かに胸に秘め、ドワイトは犯人のもとへ青いセダンを走らせる…。

↓↓以下ネタバレが含まれている場合がありますのでご注意ください。↓↓
自分の好きなジャンル(カテゴリー?)のひとつである復讐モノ。
全体的に重さエグさはかなり控えめのあっさり系でしたが、押さえるところはちゃんと押さえる作りでそこそこ楽しめました。

さてさてこの映画、方向性は自分の好きな復讐モノのそれではあったんですが、復讐することの虚しさとか不毛さとかいった、復讐モノの肝心要となる(と個人的には思っている)部分を際立たせる演出はかなり控えめでしたね。そもそもの発端となったドワイトの両親が殺されるシーンについては作中まったく描かれていなかったり、主人公ドワイトを感情をあまり表に出さないキャラクターとして造形しているあたり、できる限りギトギトしたテイストにならないよう意識して作られているのが分かりますよね。
タイトルにも入っている“青”を映像の中に印象的に差し込む演出などからも、監督がこの作品で目指したものが見えてくる気がしますが、どちらにしても中途半端になっちゃっているような気がします。

ただ、ドワイトがお姉さんと喫茶店で会話するシーンはちょっと良かった。お互い平常心で会話を進める二人が、お姉さんの「なぜ今さら来たの?」という問いかけから、静かに感情を高ぶらせてゆく表現がものすごく印象的で心臓がきゅっとなりました。この映画で一番好きなシーンかもしれません。

あと、ドワイトの友人ベンもなかなかいい味出してましたね。
ドワイトとしてはダメ元でベンに協力を求めた感じでしたが、ドワイトが思っていた以上にベンはドワイトの気持ちを汲んでくれていたんだというのが最後に分かってグッときました。ドワイトがテディに殺されそうになっているところで、どう考えても助からない状況かと思いきや、まさかあそこでベンが助けに来るとは全然予想していなくて本当に驚いた。映画を観ててあんな変な声が出たのは久しぶりですよ。ああびっくりした。

ところで、最初に殺したウェイドが実は両親の敵ではなく、本当の敵であるその親父ビッグ・ウェイドはすでに亡くなっていたという事実が判明して以降、ドワイトの復讐心はどのように変化していったんでしょうか。結局それはラストまで分からず仕舞いでしたが、はたしてドワイトを突き動かしていたものは何だったんでしょうね。姉に危害が及ばないよう相手の家族を皆殺しにしなくてはという使命感だったんでしょうか。
ラストのドワイトの自分語りのシーンで、「やめない理由は一つ」と言うドワイトに対して、そのあとに続くドワイトの言葉を待たずに「あんたの姉さんには手を出さない」とかなんとか女が言葉をかぶせていますよね。これによって“姉を守るため”というのが「やめない理由」に見えてしまいそうですが、その前に「やめる理由」「殺さない理由」をずっと考えていたともドワイトは言っています。“姉を守るため”というのが「やめない理由」なのであれば、「やめる理由」「殺さない理由」を考えるというのはちょっと筋が通らないので、だとするとやはりドワイトの「やめない理由」は、ただただ純粋な復讐心からくる殺意だったとしか考えられません。もしそうなら、終始無表情で感情を表に出さなかったドワイトが内に秘めていたそれは、実は想像以上におぞましく激しいものだったということですね。これ、背筋がゾッとしませんか。
ラストはお決まりのというか、至極当然の全滅エンド。一人生き延びた少年の心中がいかなるものかは気になるものの、「はいこれでお終い」といった感じのさっぱりした締め方でした。欲しがりな自分としては、もうちょっと何かあってもいいんじゃないかなぁとか思ってしまいましたが、まぁそれはワガママか。

ああそういえばこの映画、カメラワークっていうんでしょうか、撮影の技法については全然詳しくないので分からないんですが、なんというか少々クドめの撮り方をしてて面白いなぁと思ったシーンがちょいちょいあったのが興味深かったです。ドワイトがウェイドに復讐を果たすシーンで、こめかみをナイフで貫かれてぶっ倒れたウェイドの顏をチラっチラっと何度も見せてみたり、ベティが顎をライフルで撃ち抜かれるシーンでそこそこ近めのアングルを切り替えなしで見せてみたり、ベンと別れたあと路上でおう吐するドワイトを執拗に見せ続けてみたりなどなど。狙いがなんなのかはちょっと分かりませんが、そのネットリした感じが割と好きでした。

あと、完全に余談ですが、ウェイドのお兄ちゃんテディを演じた俳優さん。なんかこの方の演技に妙に惹かれるものがありまして、ちょっとその俳優さんについて調べてみました。この方ケヴィン・コラックさんという方で、テレビドラマや短編映画などによく出演されている俳優さんのようで、彼の経歴でちょっと面白かったのが、この方アメリカ版のアニメ「星のカービィ」とかゲームの「ワンピース」に出演されており、「ワンピース」ではなんとボン・クレー役だったみたいです。ボン・クレーですよ。そういわれてみれば確かに特徴的な声されてますもんね。いやぁ世間って狭いもんですね。

「ブルー・リベンジ」のスタッフ&キャスト
監督:ジェレミー・ソルニエ
脚本:ジェレミー・ソルニエ
出演:メイコン・ブレア、エイミー・ハーグリーブス、デヴィン・ラトレイ、イヴ・プラム、ケヴィン・コラック、デヴィッド・トンプソン