児童文学 | ムーミン谷の十一月

原題:Sent i november
著者:トーベ・ヤンソン
発行:1970年
ものさびしい気配がおしよせるムーミン谷の十一月。ムーミン一家に会いたくて、ムーミン谷へ行きたくて、集まってくる六人。ムーミンママになぐさめてもらいたいホムサ、ひとりでいるのがこわくなったフィリフヨンカ、自分でないなにかになりたいヘムレンさん、養女にいった妹のミイに会いたくなったミムラねえさん、ずっと昔にいったムーミン谷の小川で気ままにすごしたくなったスクルッタおじさん、五つの音色をさがしにムーミン谷へもどったスナフキン。ところが、ムーミン屋敷はもぬけのから。待てど暮らせどムーミン一家はもどってきません。六人の奇妙な共同生活がはじまります。

<感想>
ムーミンシリーズ最終作にして、ムーミン一家が登場しない物語とは、まったく意表を突かれました。
前作の「ムーミンパパ海へいく」にて、ムーミン一家がムーミン谷の家を留守にしている間のお話ということなんですね。
前作ほど冷たい感じではありませんが、今回も大きな起伏のない淡々とした展開で、そこはかとなく侘しい空気が漂っています。
ムーミン一家を恋しがってムーミン谷へやってきた六人が、そこでそれぞれ何かを見つけて、またそれぞれの場所へ戻ってゆく様子は、なんだか今作でムーミン一家に別れを告げることとなる読者の心情とシンクロしているような気がします。
そう考えると、最後までムーミン一家の帰りを待ち続けるホムサ・トフトの存在は、なんとも感慨深いものがありますね。
ひとまず、これにてムーミンシリーズ読了です。