原題:ぼんぼん 全一冊
著者:今江祥智
発行:1973年
突然の父の死。祖母の死。そして戦争がはじまった。日々の暮らしのなかで何が変わり、何がなくなっていったのかを、多感な時期を迎える”ぼんぼん”洋の 目をとおして語る。さまざまな人間模様、危険なできごと、淡い恋心――。力強く生きぬく少年の姿を、大阪弁にのせて、ていねいに描いた作者の代表作。
<感想>
小松洋少年とその家族の戦前から戦後にかけての生きざまを描いた4部作、「ぼんぼん」「兄貴」「おれたちのおふくろ」「牧歌」の4作を1冊にまとめた作品。
2段組みでびっしり文字の詰まったページが約850ページという、一見さんお断り的なボリュームとなっておりますが、4作品でひと続きのストーリーとなっているワケではないので、よっぽど好きとかでもなければ、4作品一気に読む必要はないかと。
読んでみた感じでは、「ぼんぼん」が本編で、「兄貴」「おれたちのおふくろ」が「ぼんぼん」の補完的な作品、「牧歌」は外伝的な作品といった印象なので、興味のある方は、まず、岩波少年文庫から出ている「ぼんぼん」を読んでみて、気に入ったら他の3作も、という流れが良いと思います。
ちなみに、「ぼんぼん」はまだ小学生でも読めそうな内容ですが、作品が進むごとに”児童文学”というカテゴリからはちょっと外れてゆくようで、4作目の「牧歌」にいたっては、なかなかエグい内容も描かれているので、対象年齢はちょっと高めかなと思います。
全体的にクセがなく、作者の味のようなものもなんとなく薄くて、そのあたりは正直物足りなく感じはしましたが、銃後の日本の庶民の生活が、洋少年を中心に優しい文体で丁寧に描かれていて、戦争という暗い背景はあるものの、不思議と爽やかな読後感の残る良い作品でした。
児童文学 | ぼんぼん 全一冊
