児童文学 | きよしこ

原題:きよしこ
著者:重松清
発行:2002年
少年は、ひとりぼっちだった。名前はきよし。どこにでもいる少年。転校生。言いたいことがいつも言えずに、悔しかった。思ったことを何でも話せる友だちが欲しかった。そんな友だちは夢の中の世界にしかいないことを知っていたけど。ある年の聖夜に出会ったふしぎな「きよしこ」は少年に言った。伝わるよ、きっ と──。大切なことを言えなかったすべての人に捧げたい珠玉の少年小説。

<感想>
現代の人気作家のひとり、重松清さんの作品。
恥ずかしながら初めてこの作家さんの作品を読みましたが、いやぁ、読まず嫌いってホント駄目ですね。
自分は、家族に吃音者がいて、その大変さをずっと近くで見ていましたので、まず苦しさが先にきてしまいましたが、全編を通して心に響くものがある良い作品でした。
全7編の物語の中でも、特に「きよしこ」と「乗り換え案内」の2編が良かった。
お父さんの背中に抱きついて、どもりながら魚雷ゲームが欲しいと訴える少年が、なんともいじらしくて、たまらない気持ちになりました。
世間ではなかなか理解されづらい吃音ですが、それを前面に押し出すような主張をすることもなく、あくまで吃音を持った少年の成長物語として描かれていて、このあたりはやっぱりこの作家さんの巧さなんでしょうね。
優しい文体でクセがなく、さらっと読みやすい作品なので、読書がちょっと苦手な人なんかでも読みやすいんじゃないでしょうか。