児童文学 | 天の園

原題:天の園
著者:打木村治
発行:1972年
著者・打木村治の自伝的小説。明治から大正にかけて、埼玉県比企郡唐子村(現在の東松山市)を舞台に、河北保少年の小学校一年生から中学受験(旧制)までの六年間の物語を、学年別の形式で六冊につめこんだ長編大河小説。
第一部「雲の学校」、第二部「雲のよび声」、第三部「雲の祭り」、第四部「雲の町」、第五部「雲の階段」、第六部「雲の恩」の全六冊。

<感想>
大長編だけあって、無邪気で奔放な保少年の6年間の成長の過程をじっくり堪能できます。
幼い保少年の喜怒哀楽がまさに本人目線で描かれており、大人から見れば何でもないような小さな世界の中で、子供らしく全力で真剣に生きている様が、何とも微笑ましくて良かった。
間違いなく日本が舞台の物語ですが、日本ではないどこか違う国の物語を読んでいるような気になるほど、現代とはかけ離れた生活の様子が、とにかく興味深くて面白かったです。
中学受験は、当然合格するとは分かってはいても、いざ決まった時には、それまでの6年間の様々な出来事が一気によみがえってきて、さすがに鳥肌が立ちました。
この作品、世間的にはあまり知られていないようですが、もっと広く読まれてもいい作品だと思います。