映画 | ザ・ギフト

原題:The Gift
製作国:アメリカ
製作年:2015年
新たな土地で幸せな夫婦生活を始めたサイモンとロビンは、ある日、街中でサイモンの学生時代の同級生と名乗る奇妙な男・ゴードと出会う。お互いに再会を喜び合うかに見えたサイモンとゴードだったが、ゴードからたびたび贈られる“ギフト”が日を追うごとに異常さを増してゆき、その意図をはかりかねる二人の困惑は徐々に深まっていくのだった…。

↓↓以下ネタバレが含まれている場合がありますのでご注意ください。↓↓
お気に入り俳優の一人ジョエル・エドガートンの初監督作品ということで、まぁ過度の期待はしていませんでしたが、なんだかんだでそこそこ期待していた今作、観終わった印象としては、とても丁寧に作られている平凡な作品といったところでした。
最初から最後まで想像を超えるような展開はなく、まぁ王道と言えば王道なのかもしれませんが、正直ありきたりな印象が拭えませんでした。
ただ、押さえるところはしっかり押さえて、とにかく丁寧に丁寧にストーリーが進行してゆくので、その王道を楽しむというスタンスで観る分には十分面白い作品なんだろうなとは思いました。

個人的にこの映画で一番気になったというか、残念だなぁと思ったのは、やっぱりサイモンのキャラ設定でしょうか。
序盤こそ何の罪もない善良な夫婦が、キチガイじみた不気味なゴードに翻弄され幸せな生活を脅かされるという展開で、何とも薄気味の悪い不穏な空気がとても良かったんですが、蓋を開けてみたら結局キチガイと思われていたゴードの方が実はマトモで、逆にサイモンの方がとんでもないクズだったというオチ。
終盤にいたってはサイモンのクズっぷりがこれでもかというくらい暴露され、結局観ている側がゴードに同情してしまう作りになっているため、ラストのゴードからサイモンへの“ギフト”の中身が判明したところで何ら不快感もなく、むしろすっきりと溜飲の下がるラストになってしまっています。
まぁこういうカタルシスのある痛快な締め方の方がきっと好まれるのだとは思いますが、物語の前半のあの不穏で不快な空気を、後半で綺麗さっぱり洗い流してしまっているのが何だか勿体ないなぁと感じてしまいました。
個人的にはもっと陰惨で不快感きわまるラストを想像してしまっていたので、無駄に肩透かしを食らった形になってしまったということかな。

あとそういえば、ゴードは左耳にだけやたら目立つ大きなピアスをしていたのが作中チラチラと目につきました。
あのもっさい風貌にやたら大きな左耳のピアスがなんだか不釣り合いでもの凄く違和感があったんですが、これは何かしら意味があったんでしょうか?
今はどうか分かりませんが、ピアスを右耳だけに付けている人はゲイだとかなんとかいう話が昔ありましたよね。
これは元々【左耳ピアス=守る人】【右耳ピアス=守られる人】といった意味があるそうで、そこから男性が右耳だけにピアスを付けるのは【守られたい=女性的=ゲイ】といったことを意味していて、つまりはゲイアピールのしるしとされていたようです。
そして、逆に男性が左耳だけにピアスを付けるのは【より強く逞しい男性である】ことのアピールのしるしとなっていたそうです。
まぁそもそも【守る人=男性】【守られる人=女性】【女性的=ゲイ】という考え方に基づいている時代錯誤な風習(?)だとは思いますが、そういった点も踏まえて考えると、ゴードの左耳のピアスについて、ちょっと興味深い考察ができるような気がします。
つまり、その時代錯誤な風習(?)にすがり、自身の風貌にいかにも不釣り合いなピアスをあえて身に付けてまで【自分は強く逞しい男なんだ!ゲイなんかじゃないんだ!】とゴードは主張しているわけですね。
これは、過去にサイモンにゲイだと言いふらされたおかげで人生を狂わされ不幸な生活を送る羽目になったゴードが、口ではサイモンに「過去のことは水に流す」とかなんとか言いつつも、実は全く水に流せておらず、むしろ尋常でないほど執着していることを表しているのではないかと思うわけです。
結局作中ではゴードのキャラ設定はかなりあっさりしていて、復讐心に駆られる人間としてはむしろスマートともとれる印象のものになっていましたが、実際には心の奥底に果てしなく深い闇を抱えていたのではないかと思うと、この辺のギトギトしたものがもっと作品内に表れていたら良かったのになぁと思わずにいられませんでした。

「ザ・ギフト」のスタッフ&キャスト
監督:ジョエル・エドガードン
脚本:ジョエル・エドガードン
出演:ジョエル・エドガートン、ジェイソン・ベイトマン、レベッカ・ホール