原題:Found
製作国:アメリカ
製作年:2012年
同級生にからかわれてもやり返すことすらできない小心者のマーティ。そんなマーティのささやかな楽しみは“ホラー映画”と“家族の秘密の覗き見”だった。ガレージに隠された父のヌード雑誌、ベッドの下に隠された母のラブレターの束、そして兄の部屋に隠された本物の生首。兄の目を盗んではボーリングバッグに収められた生首を眺め妄想をするマーティだったが…。
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頭を空っぽにして観られるぶっ飛んだホラー映画を観たいなぁと思って手に取った本作でしたが、期待に反して意外にそれほどでもなくて撃沈…。
この映画、おそらくグロ好きかどうかで感想が大きく分かれると思われます。グロの見せ方というか使い方というか、なんかそのあたりがちょっと普通のホラー映画とは一線を画す作りになっているので、良し悪しはともかく、グロ好きの方であれば何かしら感じ入るものがあるのかも。
ただ、自分はグロ好きではなく、ホラー映画の評価にグロ要素が影響することはほぼない質なので、そういった人間からすると、取り立てて言うことがない実に平々凡々な映画だったなぁと。面白くなくはないんですけどね。
鑑賞前は「お兄ちゃんがクローゼットに人間の生首を隠している」という変わった設定にドキドキワクワクでしたが、その設定が上手く生かされていないような気がしました。
なんというか“何気ない日常の中に紛れた小さな異常”みたいなものが漂わせる“不気味さ”とか“居心地の悪さ”とか、何かそういった空気感のホラー映画を期待していたのですが、作中ではその“何気ない日常の中に紛れた小さな異常”である生首の存在が驚くほどあっさり描かれていて見事なまでに拍子抜けで、そこからどういう気持ちで観ていたらいいのか分からなくなってまごついているうちに、いつの間にか映画が終わってしまっていたという感じ。うーん。
唯一ちょっと悪くないなと思ったのは、マーティが生首の存在を知っていることがお兄ちゃんにバレた後、つまりマーティがお兄ちゃんの正体を知った後、自分をからかってきた同級生をマーティがボコボコにするくだりでしょうか。
お兄ちゃんの、弟のためにいじめっ子を殺すという歪んだ行動がマーティに歪んだ勇気を与え、マーティの人生の価値観を歪んだ方向へ大きく変えさせたというくだりですね。この流れをさも“美しい兄弟愛”のように描いて鑑賞者の不快感をあおってくるあたりは案外嫌いではなかったかな。
まぁでも、ラストではそんなお兄ちゃんが結局はただのド変態さんだったということが分かって、マーティの頭も一瞬で冷めてしまうんですけどね。ここでマーティが冷めなかったらまだ面白かったのにな。
そして、グロ好きの人にとっては一番肝心であろう、ラストのお兄ちゃん大フィーバー。
ラストのお兄ちゃんの凶行についてはすべて音のみで、実際に手を下している場面は一切見せないという、ホラー映画としてはなかなか大それた演出になっていますが、他の方のレビューなんかを見ていますと、やっぱりこのラストシーンについては好き嫌いがばっつり分かれているみたいですね。
ホラー映画において、グロシーンを直接描写しない(見せない)というのは、ホラー映画ファンから嫌がられる傾向にあると思いますが、そんなことは重々承知だと思いますし、そのうえでなぜ敢えてこのような演出にしたんでしょうね。
作中流れる架空のグログロホラー映画「Headless」を見せておいて、それに影響を受け真似している(と思われる)お兄ちゃんという前提を作っておくことによって、ラストの凶行は音だけの方がより想像を掻き立てられ、直接見せてしまうよりも強烈な印象になる、という考え方もありますが、実際この映画ではその試みは成功しているのか失敗しているのか、どうなんでしょうね。自分には正直よく分かりませんでした。
ちなみに、作中流れていた架空のホラー映画「Headless」ですが、こちらスピンオフ作品として2015年に実際に長編映画化されたそうです。
「Headless」の内容は、この「FOUND」とは違って、作中であったようにひたすらグロを追及した内容のようなので、とりあえず自分は鑑賞する機会はないかなぁと思います。まぁその前に日本公開すらなさそうですけど。
「FOUND ファウンド」のスタッフ&キャスト
監督:スコット・シャーマー
原作:トッド・リグニー
脚本:トッド・リグニー、スコット・シャーマー
出演:ギャビン・ブラウン、イーサン・フィルベック、ルーイ・ローレス、フィリス・ムンロー、アレックス・コギン、シェーン・ビーズリー