原題:星の牧場
著者:庄野英二
発行:1963年
銀河の星くずの砂原を愛馬ツキスミが走っている-。記憶を失って山の牧場に引き揚げてきた鍛工兵モミイチは、戦地インドシナ半島で世話をしていた馬のことだけは鮮明に覚えていた。
<感想>
ストーリーらしいストーリーはなく、ひたすらモミイチとジプシーたちとの交流の様子が描かれる物語ですが、とにかくその世界観が独特で、夢を見ているような陶酔感を覚えつつも、それがとても身近で人間臭くも感じられ、いつまでも浸っていたくなるような居心地の良さを感じる作品でした。
物語全体を通して、戦争で心に傷を負った人間の悲哀が常に根底にありますが、そのものを直接描くようなことはしていないため、感じ方は人それぞれになってきそう。
一応”童話”に分類される作品ではありますが、もっと幅広い世代で読まれる価値のある貴重な作品ではないでしょうか。
自分が生まれる10年以上も前に書かれた作品ですが、この歳になるまで読む機会がなかったことが返す返すも悔やまれます。
児童文学 | 星の牧場
