ゲーム | Everybody’s Gone to the Rapture -幸福な消失-

開発元:The Chinese Room
発売元:PlayStation Mobile, Inc.
リリース日:2016年4月15日
1984年6月6日午前6時37分、イギリス・シュロップシャーのとある小さな農村“ヨートン”から、すべての住人が消失した。誰もいなくなった“ヨートン”を訪れたプレイヤーは、消えた住人たちの唯一残された“想い”を見つけ出し、その“想い”の主たちがいかなる最期を迎えたのかを見届けることとなる…。

↓↓以下ネタバレが含まれている場合がありますのでご注意ください。↓↓
こちら、PS4ダウンロード専売で2015年8月11日に配信されたゲームです。
配信前にゲーム情報サイトなどで見かけてずっとやりたいなぁと思っていましたが、あいにくPS4を持っていないため諦めていたところ、なんとまさかのSteam配信ときて狂喜したのは良い思い出です。

まぁなんというか、“キングオブ雰囲気ゲー”とでも言いましょうか、雰囲気を楽しむ以外にやることがない究極の雰囲気ゲーでした。
Steamのストアページの内容紹介では「終末の謎を解き明かしましょう。」などと書いてありますが、プレイヤーが何かしら「謎解き」に関われることはなく、やれることと言ったら箱庭の中を歩き回って、各所に散らばった人々の残留思念的なものを拾い集め、その時その場で何が起きたのかを見て回ることだけ。
ただ、その雰囲気を楽しむという点においては、とにかく素晴らしいの一言。まぁ自分の場合はストーリー(+演出)の良さだけで8~9割は持っていかれてしまったので、きっと他の要素がそこそこでもかなり満足だったとは思いますが、このゲームに関してはグラフィックや音楽なども大変素晴らしく、思わずため息が出てしまうほど美しく荘厳な雰囲気にあふれていて、それらが相乗効果をもたらして、とにかくすさまじい没入感。総プレイ時間5時間程の内容でしたが、ぶっ通しプレイで気づいたらエンディング。スタッフロールで呆然。このゲームすごいわ。

さて、肝心のストーリーについてですが、これはネット上でも様々な考察がされていて、とにかく謎が多く残るストーリーでした。ゲーム内で明確な答えも明示されていないので、本当に悩ましい限り。
タイトルの「Rapture」とはどうも宗教的な意味合いが強い言葉のようですが、ただ、個人的にはプレイヤーに宗教的な知識がなくても楽しめるストーリーなのではないかと思っています。
どうやら宇宙の彼方からやってきた“何か”が、電線などを通じて人々の身体に何かしらの影響を及ぼし、頭痛や出血などの症状を起こさせ、最終的にはその肉体そのものを消失させてしまうらしい。
結局その“何か”が起こす現象については、人間には到底理解の及ばない次元の超宇宙的な“何か”であって、その全く理解の及ばない現象に対する畏怖の感情が宗教と結びついたということなのではないかと。つまり、太古の昔、火山の噴火や大津波などの自然災害に対して、当時の人々は全くの無知で、その到底理解することのできない現象を神の仕業として怖れ、祈りを捧げていたのと同じことなのではないかと自分は解釈しました。
現在、この地球上で大いに繁栄している人間ですが、宇宙規模で見たらそれこそ吹けば飛ぶ塵のようなちっぽけな存在で、その超宇宙的な“何か”に抗うすべもなく、それぞれの登場人物たちが、それぞれの最期を過ごし、そして静かにこの世界から消えてゆく…。この穏やかで緩やかな絶望感がたまらないです。

ちなみにこのゲーム、ストーリーの進め方についてはけっこう自由で、一応章仕立て(なのか?)になっており、1章ジェレミー、2章ウェンディー、3章フランク、4章リジー、5章スティーブン、6章ケイトといった感じで構成されていますが、その章の人物の終末シーンを鑑賞しないまま、次の章に進むこともできてしまうのが、ちょっと不親切かなぁと思いました。
次はどこへ行けばいいんだろうとあてもなく道を歩いてたら急に別の人の名前が出てきたりして、最初ちょっと意味が分からずとまどいました。これ、何も考えずに進めても、とりあえず主要人物の終末シーンについては漏れなく辿ることができる流れにしてくれていたら良かったのになぁ。それがメインクエストみたいなものでしょうし。
これからプレイする方は、上に書いた6人の人物がそれぞれどんな関係で、どんな性格をしているかなど、その人物像やその人生なんかに思いを馳せながらプレイすると幸せになれるかも。それぞれの人物たちの終末シーンは鳥肌必至です。

ところで、このゲームの開発元のThe Chinese Roomですが、こちらは「Dear Esther」もなかなか面白そうですよね。「Dear Esther」はもう随分前にウィッシュリストに突っ込んだままで、いまだプレイできていませんので、こちらも近いうちにやりたいな。
あと、今回調べていてちょっとびっくりしたのが、このThe Chinese Room、あの名作ホラーゲーム「Amnesia: The Dark Descent」の続編「Amnesia: A Machine for Pigs」の開発元だったんですね。
「Amnesia: A Machine for Pigs」は、「Amnesia: The Dark Descent」のファンの方たちの芳しくない評判をよく目にしていたもので、自分もちょっと敬遠していたんですが、こんなゲームを作った開発会社の作品だと分かった以上、ちょっとどころではなく興味がわいてきました。あ、でもあれ日本語化できないんでしたっけ。うーん困った…。